硝子体注射(抗VEGF療法)

硝子体注射
(抗VEGF療法)とは

加齢黄斑変性や網膜静脈閉塞症、糖尿病網膜症などの網膜の疾患により、黄斑(網膜の中心部分)に浮腫(むくみ)が生じると、ゆがみや中心暗点(真ん中が暗く見える)、視力低下などの症状が出現します。
これらの疾患では、体内のVEGF(血管内皮増殖因子)という物質が、新生血管の増殖や黄斑浮腫の悪化に関与していることがわかっています。
抗VEGF治療はこのVEGFの働きを抑える薬剤を眼内に注射することにより、黄斑浮腫を改善させ、病気の進行を抑制する治療法です。治療は、硝子体注射という方法で行われます。初回の治療後は、病気の状態を見ながら追加の注射を継続していくことが多いです。

抗VEGF療法が有効である疾患

加齢黄斑変性をはじめ、糖尿病網膜症や網膜静脈閉塞症、血管新生緑内障、病的近視による脈絡膜新生血管などの疾患の治療で、活用されています。

糖尿病網膜症

糖尿病の3大合併症の1つでもある疾患です。網膜には毛細血管が多くあるため、糖尿病を患うと、目の中の血管も詰まってしまいます。その結果、網膜に必要な酸素・栄養が送られにくくなるため、網膜に新生血管が生み出されます。しかし、新生血管は本来あった血管よりも繊細ですので、硝子体出血を引き起こす要因にもなります。悪化すると牽引性網膜剥離も引き起こし、最悪の場合、失明に至ります。また、糖尿病網膜症は、糖尿病を起こしてから数年~10 年以上経った後に、発症する傾向があります。
糖尿病と診断された方は、目の自覚症状がない段階でも、定期的に眼底検査を受けるようにしましょう。

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加齢黄斑変性

黄斑に新生血管が伸びたり、出血が起こったりする疾患です。黄斑は網膜の中心部であり、物を見るのに必要な視細胞が多く集まる組織です。
加齢黄斑変性は、喫煙の習慣がある方や60 歳以上の男性に多くみられる疾患です。初期段階でも「物が小さく見える」「視界が暗く見える「物が歪んで見える」などの症状が起こりますが、一気に視力が下がるケースもあります。

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網膜静脈閉塞症

網膜の静脈が詰まった結果、血液の流れが滞ってしまう疾患です。50 歳以上の患者様が多く、高血圧や動脈硬化、血液疾患、血管の炎症などによって起こります。
静脈が詰まると血の巡りが悪くなるため、末梢静脈から血液が漏れ出るようになります。この血液によって、眼底出血や網膜浮腫が引き起こされます。眼底出血や浮腫が黄斑にまで進むと、視力が下がります。そのままでいると、視力が元に戻らなくなる可能性もあります。

近視性脈絡膜新生血管 病的近視(強度近視)

近視とは、角膜から通った光が網膜よりも前方に、焦点を合わせてしまう状態です。眼軸長(がんじくちょう:角膜から網膜までの長さ)が長くなることで発症します。
病的近視とは、「屈折度数は問わず、びまん性脈絡膜萎縮以上の萎縮性変化(特に乳頭耳側)もしくは、後部ぶどう腫を有する状態で日本人の視覚障害の原因の中でも、4 位の疾患です。

病的近視における脈絡膜新生血管(みゃくらくまくしんせいけっかん)は病的近視の方の5~10%に起こる病気で、眼底(がんてい)で出血やむくみを生じる病気です。