結膜炎

結膜炎とは

 何らかの原因によって、結膜に炎症が起こる疾患です。発症原因としては、アレルギーや細菌、ウイルスなどが挙げられます。原因やお悩みの症状も、一人ひとり異なります。結膜とは、まぶたの裏側から角膜の輪部(黒目と白目との境界部分)まで覆っている粘膜です。目の中に異物が侵入しないよう保護したり、目の表面を涙で保護し、目の表面を守ったりする働きを持っています。私たちの目は開いている時、常に空気に触れているため、細菌やウイルスが侵入しやすいです。
アレルギー性結膜炎が起こると、目のかゆみや充血、眼ヤニなどが現れます。また、鼻水やくしゃみなどが出てくるアレルギー性鼻炎を伴ったり、瞼の裏がブツブツに腫れたり、異物感や痛みに悩んだりする方もいらっしゃいます。
ウイルス性結膜炎を発症した時に現れる症状は、原因となるウイルスによって変わります。主に「朝起きたら目が開けないほど目ヤニが出ていた」「目がひどく充血している」「片目だけ症状がある」などの症状がみられます。中には他者へうつしてしまう結膜炎もあり、その場合はしばらくの間、学校や場合によっては仕事を休まなくてはなりません。

アレルギー性結膜炎

 ダニやハウスダスト、カビ、獣毛、花粉、コンタクトレンズの汚れなど、特定のアレルゲンに接触することで起こるアレルギー反応です。目や目周辺のかゆみ、充血などが起こります。
アレルギー性結膜炎は2種類あり、「季節性」と「通年性」に分類されます。そして、10 歳頃までの男の子に多い「春季カタル(重度のアレルギー性結膜炎)」もあります。春季カタルになるとまぶたの裏の粘膜が盛り上がり、強い目のかゆみと白くてネバネバした目ヤニが大量に出ます。
アレルギー性結膜炎で「目がかゆいから」と、つい目の周りを擦りがちになります。しかし、目を擦ると角膜に傷が付きやすくなります。視力低下を招く恐れもあるため、目をいじらないようにしましょう。

アレルギー性結膜炎の対処法

まずはアレルゲン(アレルギー症状の引き金となる物質)を見つけ出し、それらを除去または回避しながら日常生活を送りましょう。

ハウスダスト・ダニ

まず、室内をきちんと掃除してホコリを減らしましょう。日本の家屋はダニが繁殖しやすい作りとなっているため、カーペットやラグマットの使用はできる限り避けることが望ましいです。また、フローリングのすき間にダニが溜まることもあるため、頻繁に掃除機で吸い取るようにしましょう。仕上げに拭き掃除するのもお勧めします。
加えて、晴れた日には布団を天日干ししましょう。干した後はポンポンと布団を軽く払い、ダニの死骸やホコリを払い落としましょう。さらに、干した布団を掃除機で軽くかけるのも効果的です。普段使う寝具や生活グッズはできる限り、防ダニ加工されている商品を選びましょう。

カビ

水気が多い場所(キッチンやお風呂場など)はどうしてもカビが繁殖するため、こまめな掃除・換気を心がけましょう。近くに窓がありましたら、ぜひ開けて空気を入れ替えましょう。カビは、エアコンのフィルターや加湿器などにも付きやすいので留意しましょう。

獣毛

該当するあれるぎーをお持ちの方はご自宅内はもちろん、出先でもアレルゲンになるものには触らないように気を付けてください。

花粉

花粉が飛ぶ時期は、外出時の服装や洗濯に気を付けなくてはなりません。外出時には眼鏡やマスク、帽子などを活用し、花粉が目や鼻、髪の毛につかないよう保護しましょう。また、帰宅した直後は、服や髪の毛にくっついた花粉を払い、手洗いとうがい、洗眼をしてください。
洗濯は室内干しを心がけ、外干しにした時は必ず花粉を払ってから室内へ取り込みましょう。布団も同じように、室内干ししてください。もし外干しした場合は、室内へ取り込んだ後、掃除機で軽く花粉を吸い取ることをお勧めします。
毎年発生する季節性アレルギーでお悩みの方は、花粉が飛び始める前に治療を行うことを強く推奨します。症状に悩む前から治療を受けることで、お悩みの症状も軽減しやすくなります。

アレルギー性結膜炎と
コンタクトレンズ

アレルギー物質が付着したソフトコンタクトレンズを装用し続けると、アレルギー性結膜炎が悪化します。そこからさらに悪化してタンパク汚れが増え、さらにひどくなるという負のスパイラルに陥りやすくなります。症状を落ち着かせるにはまず、この負のスパイラルに陥らないようにすることが大切です。そのためソフトコンタクトレンズはできり限り、使い捨てできるワンデータイプを選びましょう。
ハードコンタクトレンズでも頻繁に使用し続けると、汚れが増えていき、アレルギー性結膜炎が起こりやすくなります。それにより、目のかゆみや目ヤニ、レンズが外れやすくなると言った症状に悩まされやすくなります。
日頃からコンタクトレンズを使っている方は特に、目の健康を守るため、定期的に眼科で検査を受けるよう心がけましょう。そして目に少しでも違和感があった場合は、念のためきちんと眼科を受診しましょう。

ウイルス性急性結膜炎

ウイルスに感染することで起こる結膜炎です。主な症状としては、目の痛み、結膜の充血、ゴロゴロ感、目ヤニなどが挙げられます。
流行性角結膜炎(はやり目)や咽頭結膜熱、急性出血性結膜炎は、ウイルス性急性結膜炎の代表疾患です。特に「はやり目」は、この中でも群を抜いて感染力が強く家庭内感染や集団感染などのリスクも高いので、他者へうつさないよう気を付ける必要があります。

ウイルス性結膜炎の種類と症状

咽頭結膜熱(プール熱)

プールの水を介して感染するケースが多かったため、「プール熱」と言われている疾患です。夏風邪の1つで、5~7 日間の潜伏期間(感染から発症までの期間)を経た後に症状が起こります。主な症状は、発熱や喉の痛み、身体がだるい、下痢などで、発症してから 10 日程経過すると、症状は落ち着きます。幼稚園児から学童期など、プールで遊ぶ機会の多いお子様によくみられます。

流行性角結膜炎(はやり目)

感染力が強いアデノウイルスによって起こる結膜炎です。一般的には「はやり目」と言われています。1~2 週間の潜伏期間を経た後に発症します。他のウイルス性結膜炎よりも症状は強く、目の充血や腫れ、目ヤニ、痛みが起こります。発症から 2 週間経過すると、症状は緩和されます。また症状が強い炎症の後遺症として角膜混濁を起こすこともあり、場合によっては羞明や視力低下の後遺症を残すこともありますので、後遺症を最小限に抑えるためにも適切な治療が必要です。

急性出血性結膜炎(アポロ病)

エンテロウイルスに感染することで起こる疾患です。「アポロ病」とも呼ばれています。非常に短い潜伏期間を経た後に、鮮やかな結膜下出血(白目が真っ赤になる状態)が起こります。見た目でビックリされるかもしれませんが、白目にできた出血は自然と吸収されるのでご安心ください。症状は1 週間程度で緩和されます。

ウイルス性結膜炎の治療方法

特効薬はないので、他の感染症を予防する抗菌点眼薬や、炎症を抑えるステロイド点眼薬などを用います。目ヤニや涙からの接触感染によってうつる傾向が強いので、「色々な物に触らない」「触れる前・後には手を洗って消毒する」「除菌を徹底する」などの対策を心がけましょう。

感染予防対策

まずは他の方に、感染をうつさないことが重要です。ウイルスのほとんどは、目を触った手やハンカチなどを介して、感染を拡大させます。そのため「目に触らない」などの対策を徹底しましょう。ご家庭や学校・職場などでうつさないためにも、手は何度も洗うようにしてください。
また、感染が起きた場合、生活用品(タオルやハンカチなど)は絶対に共有しないでください。感染した方はお風呂に入る時、ご家族の中で最後に入浴するようにしてください。
多くの方が触る場所(パソコンのキーボード・ドアノブなど)は、アルコールでこまめに消毒してください。
「他人へうつす恐れのある目ヤニ」がたくさん出る期間は、流行性角結膜炎や咽頭結膜熱の場合ですと 1~2 週間、急性出血性結膜炎の場合は 3~4 日程度になります。以下の対処法を心がけて、感染拡大を防ぎましょう。

  • 手はこまめに、石鹸を使ってきちんと洗ってください
  • 十分な休養と栄養をとり、体力を維持させる
  • 生活用品は共有しない(例:タオルなどは一人1枚にする)
  • 人混みの多いところには行かない
  • 医師からの許可が出るまで、学校は休む
  • 医師からの許可が出るまで、プールには絶対に入らない

学校保健安全法では、咽頭結膜熱は第 2 種の感染症で主要症状が消えた後2 日間は出席停止の扱いです。また、急性出血性結膜炎や流行性角結膜炎は、第 3 種の感染症で感染の恐れがないと医師から認められるまでの間は、通学できません。

クラミジア結膜炎

クラミジアに感染することで起こる疾患です。一般的に「トラコーマ」と言われています。現代の日本では衛生環境が整い性行為によって発症するケースがほとんどです。症状がウイルス性結膜炎とかなり似ていることから、初期の診断が極めて難しい結膜炎です。主な症状としては、結膜のむくみや充血、まぶたの腫れなどが挙げられます。また急性濾胞性結膜炎(きゅうせいろほうせいけつまくえん)を起こすこともあります。

クラミジア結膜炎の治療方法

抗菌薬(点眼薬)や眼軟膏、での加療となります。

ヘルペス性角膜炎

単純ヘルペスウイルスまたは帯状ヘルペスウイルスに感染することで起こる疾患です。帯状ヘルペスウイルスは幼少期に感染した後、神経節へ隠れてしまいます。しかし、何らかの理由で再活性化すると、目の異物感や充血、涙が出る、角膜の知覚低下などの症状が起こります。さらに、視力低下や潰瘍、瘢痕化を伴うこともあります。